あれは確か八年程前の一昨年の春から三年後の秋のとある日曜日、この日は朝からよく晴れて快晴の空が広がっていた。現在ではガラリと様変わりしてしまった街並みの景色を流すように眺め歩きながら、少し前までは現在とはまるで異なる装いをしていたはずなのだが、こうなってしまえばこれが当たり前になってしまうのである。夏至も間近に迫っているというのに、未だ梅雨入りの便りが届かぬことに町の人たちが、
「今年の梅雨は空梅雨か」
などと囁く噂話に耳を傾けながら、このあたりは一体どんな景色であったのかと思い返してみるのだが、まったく覚えていないのである。不思議なものである。不思議といえば・・・と、その後に続く話は特にないのだが、そう思ってしまうのもまた不思議である。年齢を重ねたせいなのか、この頃は週も半ばに入るとどうしても体に疲れが蓄積されてくるのである。ましてや、木枯らし吹きすさぶこの季節は外を歩くだけでも体に余計な力が入ってしまううえに、今にも一雨振り出しそうな曇天模様の空とくればなおさらである。この当時は公私共に忙しい日々が続いており、季節の移り変わりなどに目を向けている余裕などなかったのだが、そんな忙しさが一段落したことを機にリフレッシュでもしようかと重い体を引きづりながら桜並木の続く川岸まで足を運んでみた。桜をめでるには一足遅かったようで、既に半分以上が葉桜になっていた。
「三日見ぬ間の桜かな」
とはよく言ったものである。そんな穏やかな日和の中、土手に腰を下ろしあまりの心地よさに、こっくり、こっくりと現を抜かしていると、急に冷たい風が吹き、見る見るうちに空が暗くなり、逃げる間もなく滝のような雨に降られ、一瞬のうちに全身がずぶぬれになってしまった。
「これが近頃よく騒がれているゲリラ豪雨か」
などと、のんきなことを言っている場合ではないのである。めっきり日が落ちるのも早くなって、気が付けば既に日は西へと傾いていた。そんな半分沈んだ夕日を眺めながら、今年ももう終わりかと思えば、一年というのは本当に早いものである。って、一体何年前の、どの季節の、何曜日の、どんな天気の日のことですかなどという質問が聞こえてきそうですが、何分、私の中の古い話でありますゆえ、記憶が曖昧にござりますれば、何卒、ご容赦いただきますよう願います。そんな記憶の曖昧さをどう表現したものかと、あれや、これやと書き綴っていたら、今回、私が本当に書こうと思っていたことを忘れてしまいました。
「誰か知りません?」
「知らねぇよ」
そりぁそうですよね。はぁ~、何だったっけなぁ~。
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